2014年10月26日日曜日

オタワの国会議事堂事件考

http://perleyann.com/parlhill.htm
イスラム国に行くことを止められたカナダの若者が、オタワの国会議事堂で銃を乱射するという事件を起こした。オタワの国会議事堂には、私も行ったことがある。静かで、荘厳なところだ。議事堂内部には、英語とフランス語の同時通訳装置が傍聴席にもついているところがカナダらしい。およそ、アメリカにしても、カナダにしても、国会議事堂などに観光客をかなり自由に入れてくれる。さすがは民主主義が進んだ国だと、20年ほど前には感激したものだ。

カナダでは、モントリオールでも、この事件の前にイスラム国がらみらしいテロ事件が起こっている。ニューヨークでは、地下鉄で斧を振り上げ警官を襲った事件も起こった。アメリカを中心とするアングロサクソンを中心とした有志連合各国では、イスラム国への渡航を制限したとしても、イスラム国に行きたがる若者が本国でテロ事件を起こすという、すごい構図になってきた。

イスラム国の問題は、すでに「構造的暴力」という富の先進国への極端な偏在と、自由と民主主義、資本主義、国民国家という欧米の近代国家の価値観、それはキリスト教的な(特にプロテスタンティズムの)価値観に呼応したものであるといえると私は思うのだが、これら欧米世界全般への最大のアンチテーゼとなっているのではないだろうか。

少し、偉そうに言うかもしれないが、このことを理解するのは、かなり難しい。朝の報道番組で、メインの解説者が同様のことを言おうとした。「かなり複雑で、難しくなりますが…。」とメイン解説者は、結局明言をさけた。たとえ2時間もらえても語りつくせまい。経済問題、政治問題、一神教を中心にした人文学的な問題、これらを大局的に理解しなければ、こういう見方は出てこない。だが、そのどれもが重要である。

なぜ構造的暴力と呼ばれるような経済格差が生まれたのか。なぜイスラム諸国は、近世以後経済的発展が出来ず取り残されたのか。ではなぜ欧米諸国が勝ち組になれたのか。(WWⅠ後の英仏による)サイクス=ピコ協定によって引かれた国境線を越えて(アラブ人の)イスラム国が成立してなにが悪いのか。クルド人問題とは何か。アメリカの中間選挙と空爆の問題。有志連合とはいかなる国家連合なのか。アラブの非民主国家はなぜ「イスラム国」を敵視するのか。イラン革命以来のイスラム原理主義の動き。過激派ではない一般のイスラム教徒はどう考えているのか。…などなど、一神教や文明的な構造など巨大な問題を除いて、すぐ思いつくだけでこれくらいはある。

日本の普通のTVニュースでは、事件を表面的に取り上げ、イスラム国の暴力的側面を強調し、恐怖をあおるだけである。でも、立ち止まって考えてみたい。たしかに暴力的な面は私も大きな声で非難すべきだと思う。がしかし「構造的暴力」という絶望的な問題に対して、彼らは暴力で答えているとも見て取れる、と私は思っている。としても、それが正義だとは思わないが…。

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