日本学術振興会・基礎研究のHP http://www.africapotential.africa.kyoto-u.ac.jp/ |
これまで私は京大やアフリカ学会の公開講座で「アフリカの潜在力」について学んできた。(ラベルの京大公開講座・参照)この「潜在力」について見事にまとめられている。自分の勉強のためにも、絶対エントリーしておきたい内容である。
松田先生は、まず世界が数世紀にわたって意識的・体系的につくりだしてきた一般的なアフリカ認識(同情や救済の対象・資源の供給源)を批判する。こうした認識を打破するためには、同じく数世紀にわたってアフリカ社会が創造してきた知恵と実践に着目する以外にない、というアイディアである。これが、「アフリカの潜在力(African Potentials)」である。
これは、アフリカ社会に備わっている知恵や実践がヨーロッパやアラブ・イスラームといった外部世界からの影響とつねに衝突や接合を繰り返しながら、変革・生成されてきたものであることを前提とする。アフリカ社会が外部と折衝しつつ問題対処能力を更新するための高い能力(インターフェイス)を備えているという開放的で動態的な視点だと、いえる。
この「アフリカの潜在力」の特徴は、以下の3つの特性に整理される。
①包括性と流動性 たとえば民族移動の過程でよそものを糾合包摂し、自集団も異文化的慣習を受容しながら変容する集団編成のあり方。これは紛争の拡大を予防する。
②複数性と多重性 民族変更や民族への多重帰属、さらには異民族内部に争わない同盟集団をもつことで、紛争拡大を防ぎ、和解の回路を確保する。
③混淆性とプリコラージュ性 集団編成や価値体系は決して静的で固定的なものではなく、生活の必要によって混淆されて、地域の論理の動態性を生み出す。
この「潜在力」に着目することは、決してアフリカの伝統的知識や制度に回帰することではない。このアフリカ社会で創造され鍛えられてきた知恵や制度をグローバル化された現代の文脈の中で新しく再編成、再創造していくことで困難に対処する可能性に注目しようとするものである。たとえば、「在来の知」による生業の発展、持たざる者どうしが国家や国際機関に依存せずに自助自立するための相互扶助システム、引き裂かれた社会の癒しや和解の仕方や奪われた正義の回復法、異なる言語・文化・価値を背景にもつ人々が共生・共存していくための技法などである。
最後に、松田先生はこのように「序」を締めくくっている。「本書が提示したアフリカ認識のための枠組みが、今後のアフリカ理解のためのベーシックになることを希望している。」
…私は、この「アフリカの潜在力」や「在来知」の研究に大きな期待を抱いている。勉強を重ねて、この視点に立った「高校生のためのアフリカ開発経済学」の新バージョンをいずれ作製しなければ、と思うのだ。
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