2026年7月16日木曜日

地図で読むアメリカ15

「地図で読むアメリカ」(J・M・Vardaman著/森本豊富訳/朝日新書)の書評、第15回目。コリン・ウッダード氏の「11のアメリカ史」との比較検討をしておきたい。上記画像の左が「地図で読むアメリカ」10のアメリカ(以後⑩)、右が「11のアメリカ史」11のアメリカ(以後⑪)の地域区分である。国際系学部の学生になった気分で、できるだけ簡潔に整理したいと思う。

まずは、ほぼ同じ地域区分になっているのが、ヤンキー発祥の地である⑩ニューイングランドと⑪ヤンキーダム(⑪はそれが西に拡大しているが…)。大都市NYの⑩メトロポリタン・ニューヨークとニューネザーランド、サンフランシスコからシアトルへ続く太平洋沿岸の⑩パシフィック・ノースウェストと、ロスから始まるヒスパニックの多い⑪レフト・コースト、⑩サウスウェストと⑪エル・ノルテというところである。

反対に、両者で地域区分に独自に入れているのは、⑩ハワイと⑪ニューフランス(ニューオリンズとカナダのケベックなど)である。アラスカについては⑩ではアウトウェストに入れており、⑪ではファーストネイションとして独立させている。

両者の重要な相違は、まず南部地域の分類である。⑩ではサウスと一括りにしつつ、アップランド・サウスとディープサウスに分けて紹介している。⑪では、タイドウォーター(歴史的にイギリスの貴族的植民地の色が濃い、VAやNCなど)とディープサウスに分けられている。どちらかといえば、⑪のタイドウォーターを分離したほうが良いように思われる。さらに、アパラチア地域に関して、⑩の区分より、⑪の方が圧倒的に西に拡大している。これは、⑪が歴史的な特にアイリッシュなどのアパラチアからの移民の移動を重視しているからだろうと思われる。

西部に関して、⑩では農業地帯のハートランドとロッキー山脈と乾燥した牧畜が主のアウトウェストに分割しているが、⑪ではロッキー山脈の地帯をファーウェストとして1つにまとめられている。

北部と中部の区分も大きな相違が見られる。⑩では、五大湖周辺をインダストリアル・ノース地域とし、⑪では、ニューイングランドに繋がるヤンキーダムと宗教的寛容性のPAから繋がるミッドランドとに区分している。このミッドランドは、⑩のハートランドの農業地帯へも拡がっている。これは、⑪が歴史的な文脈から作成されたものであることを物語っているといえる。

さて、両者とも区分に入れず空白の地域がある。フロリダ半島の先、マイアミ周辺である。⑩ではNYやシカゴなどの大都市に近く、キューバ移民の話も若干でてくるのだが…。

社会科学の答えは1つではない。視点によってその法則性(結論)は変化する。まさにそれを感じる地域区分である。⑩は前述のように、様々な問題意識(住民の指向性、特に宗教的な側面、連邦政府への姿勢、環境問題への対応など)を重視した社会問題的な地域区分になっている。⑩の著者は明らかにリベラルな立場から区分していると見える。一方、⑪の方は、歴史的な側面、特に住民のエスニック・グループ的状況を重視している。どちらが正しいということはあるまい。

私にとっての問題は、教材としてどちらを主に使うべきかということである。なかなか難しい問題である。

0 件のコメント:

コメントを投稿