2021年2月2日火曜日

書評 人類の選択 佐藤優4

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佐藤優氏はロシア問題の専門家であるので、こんな面白い論が書かれていた。まず、コロナ禍に対するアメリカ人とロシア人の捉え方の相違。アメリカ人は日常的にカタストロフィを題材にした小説や映画を見ているし、ヨーロッパより信仰深い面があるので、終末観が刷り込まれている。故にかなり恐怖感が強い。それに対して、ロシア人は、危機的な状況に、食料備蓄や自分のダーチャ(農園)を持っていたりと、常に備えるという国民性がある。しかも、ナチス=ドイツが攻め込んできた大祖国戦争の記憶が未だにあり、またソ連崩壊も経験している。それに比べれば…といった冷静な感覚があるという。

さて、プーチン大統領の支持率が低下(20年ぶりに53%)している。これは、佐藤優氏によれば、プーチンの政策=中産層(階級)を作り出すことが成功したからだと言うのである。90年代の危機的状況から、分厚い中間層を作らねばいけないとプーチンは考えたようだ。この中間層は非政治的存在である。経済的にうまくいっていると彼らは、それに満足し政治に無関心であるが、クリミア問題による経済制裁、石油価格の下落、そしてコロナ禍のロックダウンで、生活水準が落ちた中産階級は不満を高めている。それが支持率に表れているわけだ。しかし、プーチンの大統領任期を2036年まで延長する憲法改正案への支持率は、40%から47%へと上昇している。中間層はプーチンの今の政策には不満だが、他に代わりになる者もいない。大混乱よりはましだ、と考えているのだと言う。

このあたり、日本の状況とアナロジカルに見ることが可能だというわけだ。…たしかに、現政権への不満は大きい。だが、野党がそれに代わると大混乱になる気がする。

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