2015年9月28日月曜日

ロシアに消えたサーカス芸人

ちょっと変わった内容の文庫本を読み終えた。「明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか」(大島幹雄著 新潮文庫/本年9月1日発行)である。私は、サーカスに別に興味を持っていない。と、いうより国内公演に行ったことがない。北京で修学旅行の付き添いで雑技団を2回見たことがあるくらいである。だから、あまりイメージが膨らまないままに読み進んだのだが、明治時代に、日露のサーカス団の交流があり、日露戦争やWWⅠ、さらにロシア革命、スターリンの粛清などに巻き込まれた日本人を追いかける話である。

このサーカスの人々は、もちろん多くは戦争などの時日本に帰国しているのだが、そのままロシア・ソ連に残った人々もいる。特に悲惨なのはスターリン時代の話だ。日本人である、というだけでスパイ容疑をかけられ銃殺されている人もいる。後に息子の努力で名誉回復するのだが、佐藤優の解説を読んでいると、フルシチョフのスターリン批判があって、粛清裁判で処刑された人々の名誉回復の申請が行われ、積極的に受理された。その中で、この申請も受理され名誉回復が行われるのだが1966年のことである。この時はすでにブレジネフやコスイギンによるソフト・スターリン主義に変更されつつあったので、当時の裁判官はかなりリスクを負っていたはずだ、と。ロシアのエリートの正義感と歴史に対する責任感、良心を貫こうとする姿勢が読み取れるという。

このところ、偶然なのかか、シベリア抑留関係やイルクーツク・バイカル湖などのTV番組を見る。抑留者は、常に友人を監視し、告発することで生き延びることを余儀なくされた。スターリン時代というのは、いかに非人間的であることか。この書を読んで、改めて認識した次第。

この本の中で、紹介されている「究極のバランス」を記録した映像がYouTubeにある。昔の映像なので見にくいが、凄い演技である。彼らこそ、「芸人」であると、思う。
https://www.youtube.com/watch?v=1_tcDMaHnAs

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