2010年2月19日金曜日

軍艦「甲鉄」始末


 『軍艦「甲鉄」始末(中村彰彦/新人物文庫)』を帰宅時の電車の中で読み終えた。幕末維新史の本としては珍しい、海軍史という視点から読み解く本である。(文庫本はこの1月が新刊)この「甲鉄」という軍艦は、幕末最強の鉄張りの装甲船である。文庫の表紙の「甲鉄」が、なかなか奇妙なデザインをしているので手にした次第。艦首が、下に突き出ているのである。衝角(ラム)というらしい。「衝角攻撃(ラミング)」と呼ばれる船首からの追突によって、追突した時の衝撃よりも自艦をバックさせて舳先を引き抜いた時に出来る大破口からの浸水により短時間で相手を撃沈できる戦法である。大砲がまだまだ発達していなかった時代の産物である。とはいえ、ちょっと不気味である。戊辰戦争の宮古湾海戦で、土方歳三らがぶんどろうとしたのが、この「甲鉄」である。たしか新撰組モノの本で読んだ記憶があった。
 内容は、この「甲鉄」の購入にまつわる話、曳航される話、戊申戦争の列強中立の話、函館戦争の話、それ以後の末路と、「甲鉄」をメインにおきながら、随所におもしろい逸話が書かれている。天才肌の数学者の小野友五郎という咸臨丸で航海長の役をやっていた人物など、幕府側にもかなりの「人物」がいたことを知った。小栗上野介と同様、才気あふれる人物である。とともに、日本という国が凄いスピードで、欧米の蒸気船を動かすスキルを習得している事実に驚く。近代を開くのは、やっぱり教育力なのだ。
 いよいよ1・2年の授業も、月曜日で終わる。新3年・2年とも結局地理Bは開講されない予定だ。社会科の会議の流れから、どうやら4月から日本史Bをやる羽目になりそうなのである。「受験に使わない生徒だけの日本史Bなら担当できるかもしれない」という私のツブヤキが、本当になりそうなのである。(社会科教師30年、日本史を持ったのはたった1回だけである。日本史嫌いの社会科教師はめずらしい。)ならば居直って、幕末から現代までをやろうか。明治維新を、様々な視点から説いてみようかというアイデアを持っている。徳川斉昭・一橋慶喜という水戸学から見た維新。小栗ら幕府経済官僚や外務官僚から見た維新。会津藩に養子に入った松平容保から見た維新。陽明学の徒・河井継之助から見た維新。思いがけず藩主になった山内容堂から見た維新。もちろん竜馬や勝さん、西郷や大久保、桂小五郎、吉田松陰、大村益次郎…わりとメジャーな様々な視点から見た維新。今回読んだ海軍という視点も面白いと思っている。そしてめざすのは、近代国家論である。近代国家論なしで、国際関係学や開発経済学はないと私は考えている。とにかく挑戦してみようと思う。

2 件のコメント:

  1. 羨ましい授業内容です。
    私の高校は工業高校だったので、教師の皆さんは教える楽しみも少なかったのでしょうが、ほとんどの生徒も教わる楽しみを知りません。
    ちなみに高校の日本史Bは二年生の原始~鎌倉、三年になっても原始~鎌倉という残念な内容でした。
    ただやっぱり高校生の時は楽な方が良かったんですけどね。

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  2. コメントありがとうございます。私は、日本史の前のあたりにあんまり興味がないので、教えるのが苦痛です。社会科というのは、生徒に興味をもってもらうことが、なにより重要だと思っています。

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