2019年8月18日日曜日

PBTの話(61) ムーサーの一撃

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金曜日の授業で、イスラム教における終末時のイーサーの話が出たことはすでに書いた。この前に、創世記の復習もした。当然ながらモーセの話も出たのだ。シナイ山からパレスチナに向かう苦難の旅で、マナという固いパンを天から降らせたという奇跡の話は、ほとんどの学生は知らなかった。同じ一神教の伝統の上に立ちながら、簿妙な差があるのが、私には実に興味深い。

さて、モーセのアラビア名はムーサーである。以前、「ムーサーの一撃」というパキスタンの詩集を日本人会で購入したことをエントリーした。ムーサーの名前が出てきて、この時、ふとまだまだ我が家には本が残っていることを再確認した。たとえば、この本などは、学生にあげたほうがいいのかもしれない、そう思ったのだ。また36冊も抽出できるかどうかはわからないが、この前渡した36冊にプラスして、できる限り渡そうと思ったのだ。その提案をしたら、皆喜んでくれた。

「ムーサーの一撃」ちょっと読み返してみた。著者のムハンマド・イクバールという人はパキスタンの国民的詩人で、ムスリムの立場から現代に対して戦闘宣言としてこの詩集を書いたようだ。一つひとつの詩は短いが、まさにイスラム復古主義的な戦闘宣言である。ちなみに、彼の画像を探していて、ラホールの空港の名前になっていることを知った。それくらい、パキスタンでは尊敬されていると言えるわけだ。

たとえば、「西欧の政治」という詩。

西欧の政治は神よ あなたと同列を装っています
だがそこの祭司はただ金持ちや有力者だけです

あなたはただ一つの悪魔を火から創りました
だがそれは数十万もの悪魔を土から創りました

「時代の変革」という詩。

アジアにもヨーロッパにもない 生の悶えが
こちらは自我の死 向こうは良心の死

心に変革の熱望が生じている
おそらく近づいてきたのだ 古い世界の死が

うーん…と、私などは思わず腕組みしてしまう。欧米側に位置する日本人の一人として、この詩を消化することは難しいが、その味わいを感じることは可能な気がする。この本をスーツケースに詰め込み、日本に向かうことになる学生は誰になるのかわからない。だが、日本で社会科学を学び、ふとこの詩集を手に取った時、その学生は何を思うのだろうか。

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