総合科目で、日本の経済史をやっていて、「アジア通貨危機」の話をする機会がある。マレーシアの学生であるし、アジア通貨危機についてはきちんと教えておきたいと思う。先日そんな状況下で、新校長のS先生の友人の方から教員や学生の役に立てば本がIBTに送られてきた。図書係もしている私が整理する役目を仰せつかったのだが、役得で「ヘッジファンド~世紀末の妖怪」(浜田和幸著/文春新書・H11年1月発行)をまず頂いた。で、さっそく読み始めたのだった。
まだ途中なのだが、なかなか面白い。アジア通貨危機については、かなり詳しく書かれていて勉強になった。金融用語はまだまだ不慣れで、「?」と思うことも多いのだけれど、結局、プリントに記した部分だけで十分だと判断した次第。ところで、このアジア通貨危機の際、当時のマハティール首相が激怒する。彼が名指しで批判した人物は、かのソロス氏である。
この本にはソロス氏のことがかなり詳しく書いてあって、なかなか興味深い。ハンガリー生まれのユダヤ人であるソロス氏はナチの迫害を乗り越え、イギリスに渡り金融筋で修行をしている。どうも、ロスチャイルド家が関係しているらしい。それに関する人脈なども詳しく記されていた。このアジア通貨危機の時もも、ヨーロッパの金融機関がかなり絡んでいるようだ。著者は、そのあたりを念密に調べていて、久々の「広瀬隆」的な本(私は昔々ロスチャイルド家に関する広瀬隆の「赤い盾」を読み切ったことがある。)に出会ったという感じである。ちなみに、広瀬隆よりは、はるかに読みやすい文章だった。
私は、同じアジア人としてマハティール首相が激怒した理由もわかるし、彼がIMFなどの支援を拒否した気持ちもわかる。アジア通貨危機を起こした張本人もIMFも、所詮同じ穴の狢だと信じていたに違いない。それは事実だと私も思う。この本の副題にあるように、ヘッジファンドとそのパックにある国際金融の世界はまさに、資本主義の妖怪だと信じるに足るところである。
アジア通貨危機やリーマンショックを教えた後、学生たちに、「人に不幸の上に築いた気づいた幸せ(カネ)は、倫理的にゆるされるのだろうか?」という疑問をぶつけた次第である。
2017年7月14日金曜日
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