ミッドバレーのホテルの部屋から、タマンデサ方面を 望む。高速道路も多く、クアラルンプールは大都会です。 |
何の勉強かというとマレーシアの地理・歴史・政治・経済・政策の変遷・産業構造など、こちらの日本大使館が編纂したガイドブックを、ひらすらノートに整理していたのでした。マレーシアの生徒に社会を教えるにあたって、マレーシアの現状を理解したうえで話したいと思ったからです。
面白い記述がありました。教育制度のところで、日本の教育基本法のような法律はないものの、1969年の人種暴動(5.13事件:急激なイスラム化政策に華人やインド人が異議をとなえ、クアラルンプールで暴動を起こした事件/実は多文化共生が実にうまくいっているようにみえるマレーシアにも、こういう過去があったのです。)の翌年発表された国家理念で、ルクヌガラ(Rukunegara)という文書がそれで、マレーシアという国の教育理念だというわけです。
我々マレーシア国民は以下の5つの目的の達成を目指す。
1)複合社会の統一された国家
2)法的に選ばれた国会による民主社会
3)全ての者に平等な機会がある公正な社会
4)多様な文化伝統を持つ自由な社会
5)科学と現代技術を志向する進歩的社会
これらの目的の達成は以下の原則によって導かれる。
1.神への信仰
2.国王と国家への忠誠
3.憲法の養護
4.法の支配
5.良き行動と道徳
宗教をことさらに政治の世界から排除しようとしている日本から見ると、驚きの目的達成の原則でした。まず神への信仰なのです。マレーシアの国王は、旧各州のスルタンから互選される任期制です。スルタンは、その州の王でありイスラムのウンマ(共同体)の中心者でもあります。国王がイスラム法(シャリーア)に従うのは当然であるわけです。憲法も神定法のイスラム法の下に制定されているはずです。これを国王も首相も公務員も守り、憲法のもとに様々な法体系をつくる(法の支配)わけで、これは近代の領域国民国家・民主主義体制であることを示しています。
イスラム教と領域国民国家(しかも工業立国して豊かで自由な国家)をいかに止揚するか。それもマレー系・華人系・インド系の複合社会です。当時のマレーシアの指導者たちはルクヌガラ文書を作るのに、大激論をかわしたのではないでしょうか。
軽々と考察できるような問題ではありませんし、私のマレーシアでの見聞も当然浅すぎますので、これからおいおい考察を加えてみたいと思います。
でも、マレーシアって、思った以上に開発経済学の対象としても、ESDの異文化理解の面からも興味深い国だと思うのです。改めて、来てよかったと思っています。
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