山本七平の「空気の研究」(文春文庫)を読んでいて、長年の謎にちょっと答えが見つかったような気がした。長年の謎と言うのは、旧約聖書の創世記にある天地創造の話と、アダムとイブとエデンの園の話が、大きく矛盾していることである。天地創造では、最後の6日目に人間が作られ、世界の被造物を支配することになっている。一方、アダムとイブの話では、土くれから人間(アダム)が作られ、それにふさわしい助け手として後にイブをアダムから創造したことになっている。創造物(魚や家畜など)の作成順もかなり異なる。人間を尊厳なる完成品とする第1話。不完全な試作品の男とそれを補完する女ができて人間が完成したという第2話。前者をP資料、前者をJ資料と言うのだそうだ。キリスト者ではない私からみると全く不思議な「矛盾」であった。山本七平は、この矛盾は人間のもつ矛盾を表わしたものであるし、さらに旧約聖書にある箴言とヨブ記を挙げている。私はこれらを読んだことがないので、コメントしがたいのだが、箴言には「豚に真珠」などの格言的な常識がちりばめられている。「正義は必ず勝ち、努力は必ず報われる世界」であるが、その箴言を守り生きたヨブは不幸になる話がヨブ記であるらしい。
このP資料・J資料や箴言とヨブ記の旧約聖書内の矛盾は、神を絶対とし、神以外のことは相対化する一神教の立場を説明するものらしい。この「空気の研究」は、日本人のもつ「空気」(KYなどと呼称する空気である。)を、一神教の立場から批判した日本人論である。
一神教の立場からすると、日本人はアニミズム的に、様々なモノやコトバを絶対視する傾向がある。一神教では神に関しては絶対的であるが、他の事には相対的である。だから、日本には「空気」が醸成され絶対視されるが、一神教世界では「空気」は存在しないのだという。
この本の書評については、以下の社会学者大澤真幸氏の書評が素晴らしい。是非ご一読されたい。
http://book.asahi.com/ebook/master/.html
2013年10月13日日曜日
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