2010年5月2日日曜日

ひとりでは夢を見ないアフリカ人



 NHKのアフリカンドリーム第2回を見た。明日は愚妻と日帰りのバス旅行なのでブログをどうしようかと思ったが、見た直後に記して、5月3日分もまとめて今日書いておきたい。それぐらい良かったし感動したのである。<画像はNHKから借用したもの>
 今回のテーマは「大地の力を我らに」と題し、資源回廊と呼ばれるボツワナからザンビア、そしてタンザニアの3国の取材である。鉱産資源開発には、莫大な資本が必要である。よって、アフリカ諸国は、外国資本に牛耳られてきた。この外国資本とどう向き合うっているかが、今回の番組のコンセプトであるといえよう。
 ボツワナは、ダイヤモンドの産出で世界の30%を占める。とはいえ、単に原石の輸出だけでは利益は少ない。(産出は30%なのに1.5%分)デ・ビアス社に長らく支配されてきた。しかし、採掘権の更新を控えて、ボツワナ政府は、DTC(ダイヤモンドの取引所)をロンドンからボツワナに移すことを条件とした。デ・ビアスは、ロシアやカナダ、オーストラリアなどのダイヤモンド採掘によりシェアが減り、これを受け入れたのである。ボツワナは、これによって、産出だけでなく、加工・流通の利益を享受できることになった。DTCの近郊に多くの加工工場が設立され、農村から多くの娘たちが加工に携わるようになっている。このような多数の労働者創出こそが、開発経済学では重要である。ボツワナの未来は明るい。それに対して、ザンビアでは、未だ外国資本の銅精錬が行われている。大統領選挙でも現職が勝ち、そのままの政策が続きそうである。インドや中国の精錬所の労働者の半分の賃金で働く鉱山労働者の不満は爆発寸前である。とはいえ、装置工業である。ザンビアの1人あたりのGDP増加は、外国資本を排除して精錬所を取り戻しても、そう簡単に向上しないだろう。ザンビアの鉱産資源の罠はまだまだ続きそうである。

 一方、タンザニア北部では、金の採掘が、外国資本によって行われているのだが、「野ウサギ」と呼ばれる現地人による小規模の採掘も行われている。彼らの採掘する金はタンザニア(金の採掘ではアフリカで3位)の40%を占めている。何故彼ら(80万人)とも言われる野ウサギが採掘可能かといえば、ドバイの金の取引所がその門戸を開き誰でも取引できるようにしているからである。金の価格は、衛星TVでタンザニアにも届く。グローバリゼーションの中に彼らも生きているのである。彼らは、単に金で儲けようとしているのではなく、村をつくりコミュニティを大切にしている。村の診療所の井戸も彼らが掘る。タンザニア政府としては税収からいえば外国資本(売り上げの3%が入る)が重要だが、野ウサギたちの力もよくわかっている。結局土地を野ウサギたちに優先的に割り振ることを決定した。さすが、一時大失敗に終わったとはいえ、ニエレレのウジャマー社会主義の国である。部族社会でなく、国民国家であることも大きいのだろう。(そのタンザニア・ウジャマーの原点アルーシャで、5月2日、TICADの会議が開かれ、日本のアフリカへのODA増額が決定された。めでたい。)いつまでも外国資本だけに頼っていてはアフリカの持続可能な開発は無い。多くの雇用を生み、自立した力で自分たちの未来を切り開いている彼らに、私は熱い拍手を送りたい。

 最後に、タンザニアの鉱山の親方の言葉が流れた。感動した一言である。「私たちアフリカ人は、自分ひとりだけでは夢をみれないのです。」多くの部下を養い、診療所の井戸を掘る彼の言葉には、またポリオの壮年をみんなで抱きかかえ新しい井戸の水をふるまう「野ウサギ」の人々には、アフリカの『あたりまえ』が脈々と流れていた。我々が、アフリカ人に学ぶことは多い。

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