2017年9月9日土曜日

エチオピア 観光開発の失敗

国立公園内で行われる放牧 https://synodos.jp/international/20205/2
エチオピアのネチザル国立公園の保護・管理・保全・をオランダのアフリカンパーク財団に委託させ失敗に終わったという福島大学の西崎信子教授(行政政策学)の論文が掲載されていた。

エチオピアは、他の東アフリカ諸国のような私有地化が進んでおらず、社会主義政権時代以来国土全体が国有地でり、野生動物の保護地域が拡大されたのはよいけれど財政的には厳しい状況で、管理保全を政府が行う余裕はなかった。そこで、先進国の環境保全に積極的なNGO(前述の財団)に民間委託された。
観光業は、うまくいけばかなりの経済効果が見込めるし、雇用も促進する。エチオピアも、2004年に財団に委託した頃から経済成長も順調になったので、インフラやホテルなど観光産業も開発し、エコツーリズムのかけ声よろしく観光客も順調に伸びたらしい。

しかしながら、この開発は挫折してしまう。国立公園内の保護区に、コレやグジといった人々が1万人ほど半農半牧の営みをしていたことが判明し、財団は違法な在住であるとして、排除する計画を事前に立てていた。これに国際人権NGOが人権侵害だと非難することになる。この財団は他の国立公園でも同様の住民とのトラブルに巻き込まれることになり、結局この開発計画から撤退してしまったのだ。

そこに生きる彼からからすれば、環境保全の重要度に対する意識は低いし、観光業の開発による雇用などは信用できないものだったのだ。グジの人々は、社会主義政権下で強制移住をさせられ、混乱期に戻ってきたという、まるでチェチェン人のような過去を持っている。今回の環境保全の動きは、単に強制移住の繰り返しだと思ったわけだ。したがって、これらの住民との摩擦は、ある意味当然であって、先進国の机上で策定されるエコツーリズム・プランという美句で簡単に片づけられるハナシではなかったわけだ。
https://synodos.jp/international/20205/2

観光だけにとどまらず、開発政策には多面的な住民との様々な軋轢がつきものである。

今日も、EJUのための国費生対象の補習が午前中あって、その後進路の相談を受けたのだが、政策学をやろうと考えている学生には、こんなハナシもしてあげたほうがいいなあと思ったのだ。

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