2017年9月30日土曜日

日経 上がらない物価の謎

http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa16-02/s2_16_1_1.html
少し古いが、9月24日付けの日経の3面に、「上がらない物価・世界を覆う謎」という記事が載っていた。以下は、その要約である。

米国のFRBが10月から量的引き締めに入ることを決めた。雇用が堅調故だが、肝心の物価は停滞したままだ。景気は底堅いのに低インフレが続く謎の減少は世界的に広がっている。

経済学界ではその原因を探る論争が盛り上がっている。新興国からの安いモノやサービスが流入していることや、労働者らの発言力低下で失業率が下がっても賃金や物価が上昇しづらい構造になっていることが原因とは、ニューヨーク大学のルービニ教授の説。
国際決済銀行(BIS)のまとめでは、6月の物価上昇率が1%に満たない国は15ヶ国。アイルランドなどはマイナスであった。(サウジ・イスラエル・タイも同様)成長著しいインドでも1.5%という8年ぶりの低水準である。(日本も失業率は20年ぶりの低さで、物価上昇率は0.5%)

低インフレの原因の理由として考えられるのは、原油安。WTIは現在1バレル$50ほどで推移している。マクロ経済の通説なら景気回復でこれだけ雇用が引き締まればインフレ圧力が高まってくるはずである。しかし日本をはじめとした先進国の賃金は上がらない。「グローバル化で企業はより安い労働力や資材にアクセスできるようになった影響が大きい」(BISのチーフエコノミスト)と分析している。国際分業が急テンポで進み、アジアでは単純労働がどんどん機械に置き換えられている。台湾のホンハイ精密工業などでは高度な組み立て作業も機械化され、コストダウンが進み生産価格が押し下げられている。供給力の問題の問題もある。世界の工場・中国だけでなく、新興国の成長率は鈍化しており、結果として大きな供給力に見合うだけの需要がなく供給過剰になっている。また、急速な電子商取引(eコマース)の拡大も物価低迷の原因と見る向きもある。同じ製品でも実店舗より安いネット通販に顧客が流れる傾向がデフレ圧力を強めている。

この低インフレ現象をどう見るか。今なら金融・通貨政策の選択肢は広い。欧米では長期緩和政策から正常化へと舵を切る動きも出ている。ただ、物価は「経済の体温」を示すものなので、拙速な判断は慎むべきだろう。

…職員室の机上に溜まった日経を自宅に持って帰って、たまたま発見した記事だが、極めて重要な示唆がある。先日エントリーした「リフレはヤバい」(小幡績著)の指摘通り、また米国のシェールガス・オイル産業の発展後の経済を予測した「シェール革命後の世界勢力図」(中原圭介著)の予測通りの展開と成っているからだ。これまでのマクロ経済の定説では理解できない現代世界の経済のダイナミズムがそこにあるような気がする。

アベノミクスは、インフレを起こし、賃金を上げ、消費を拡大、景気を回復するという。これって、もう完全に行き詰まっているような気もする次第。

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