2024年12月4日水曜日

デ・キリコ展に行ってきた

神戸市立博物館で開催されているデ・キリコ展に妻と行ってきた。期末試験の採点(例によってPCでの採点・集計)を終えて、ホント、久しぶりのお出かけである。閉幕が近いからか、ウィークデーなのに意外と人が多かった。

ジョルジョ・デ・キリコは、前述したが高校時代から馴染みのある「形而上絵画」の巨匠である。なぜ「形而上」という名が冠されているのかについては、「実際には見ることができないもの」を描いているからといえる。遠近法の焦点がズレていたり、ほとんど人間が描かれていないか、小さくしか描かれない。彫刻やマヌカン(マネキン人形)などの特異な物が描かれる。影の長さが異常に長い、などの特徴がある。哲学においての形而上学と同様に、現象を超えた世界が描かれているわけだ。

https://x.com/dechirico2024/status/1787286155412549984
今回の展覧会は、なかなか見応えがあった。中でも、私が気に入ってポストカードを購入したのは、オイディプスとスフィンクス。(上記画像/今回の展覧会では撮影可の絵画もあったのだが、これは選外だったので検索して引っ張ってきた。)超有名なギリシア神話をモチーフにした作品でかなり後期のもの。オイディプスがマヌカンとして描かれ、スフィンクスの謎かけの答えを考えているユーモラスさが面白い。

展覧会では、ニーチェの影響を受けたという点が強調されていた。このギリシアへの傾倒は、初期のニーチェの影響であることは間違いない。とはいえ、さらにその後のニーチェの思想の影響を読み取るまでにはいかなかった。ただ、彼自身の人格的な部分では超人たらんとしている感じがする。

高校時代、私の油彩画は、背景がキリコ風であった。単なる模倣だがかなり影響を受けた。後のダダイズムやシュールリアリズムに大きな影響を与えたデ・キリコ故、高校時代の私に影響を与えるなど当然といえば当然。(笑)

ちなみに久しぶりにJR東海道本線に乗ったので、貨物列車と何度も遭遇した。全部青い機関車の「桃太郎」(しかもおおさか東線の機関車とちがいキレイに洗車さtれていた。)であった。

2024年12月3日火曜日

死海文書と共同体ヤハド

https://coconala.com/blogs/3900187/425192
「死海文書の封印を解く」(ベン・ソロモン著/河出夢新書)書評の続きである。死海文書にある「共同体憲章」は、13もの同じ内容の写本が見つかっており、最重要文書とされている。この共同体は「ヤハド」と呼ばれ、パレスチナ全土各地にいたということが最近判明したという。この共同体憲章を読み解くと、初期キリスト教団との類似点が多い。以下に本書に記されているものを挙げたい。類似点・最初が共同体。次が初期キリスト教団、( )は備考

1:真の神殿とは…共同体そのもの 教団そのもの (物理的な場所ではない)2:信徒の財産は…共有 共有 3:信徒の結婚は…一夫一婦 一夫一婦 (独身主義の場合もある)4:1日の始まりは…日の出から 日の出から (ユダヤ教は日没から) 5:安息日は…土曜日 土曜日(キリスト教は後に日曜日になる) 6:使用歴は…太陽暦 太陽暦(ユダヤ教は太陰暦)7:沐浴は…常に実施 常に実施 8:聖餐は…パンと赤ワイン パンパンと赤ワイン 9:犠牲獣奉献は…意味無し・祈りで良い 同じ 10:最高評議会…12人の信徒と3人の祭司 12使徒 11:神との契約は… 新しい契約と呼び、慈悲の契約 同じ

また共通の語彙も多い。弟子たちは、多数の人や多くの人、監督者はエピスコポス(ギリシャ語で監督者)、キリスト教ではエピスコパル(司祭)。メシア(救世主)は、両者とも神の子。善と悪を、光の子たち・闇の子たち、キリスト教では光と闇という表現がパウロ書簡に多い。悪魔はベリアル、キリスト教ではコリント人への書簡に見られる。自分たちを、両者とも道と称する。

この共同体ヤハドは、エッセネ派だとする説が根強いが、学会の結論は出ていない。…つづく

2024年12月2日月曜日

欧州のEV車クライシス

https://www.greencharge.co.jp/useful/deEdgmrD
環境問題については、アメリカがあまり熱心でなかったため、復権を目指して京都議定書以来熱心に取り組んできた欧州だが、ここへ来て大きな挫折を経験している。

EU総体(脱退したイギリスを含む)としてEV車への移行を推進してきたものの、中国・EV車のダンピングに近い輸出攻勢によって、軒並み欧州の自動車業界は大苦戦しており、経済が傾きかけているのが1つ。もう一つは、EV車が環境に良いという虚構があばかれてきたこと、これはスウェーデン・ボルボ社の良心的発表(バッテリーの生産並びに廃棄後の環境への負荷が著しいこと。事実上ガソリン車のほうが環境問題において勝っていることが発表された。)によるものである。

そして、なにより、電力需要とインフラ整備がEV車の増加に追いついていないので、各国とも電気料金の高騰、長時間の充電渋滞に悩まされているようだ。また寒い地方ではバッテリーが早く尽きてしまい長距離移動には向かないこと、これは物流にも影響を与えている。

まあ、ウクライナ紛争の影響もあるだろうが、見通しが甘かった、拙速だった、と言わざるを得まい。結局、トヨタのハイブリッド車のほうが方が、安心で環境的であることが明白になっている。なんとも滑稽な話ではある。

2024年12月1日日曜日

死海文書の旧約聖書写本

今読んでいる「死海文書の封印を解く」(ベン・ソロモン著/河出夢新書)は、前に読んだ「死海文書入門」より聖書学的内容が濃い。クムランから出土した旧約聖書の写本223点で、エステル書を除き24巻全てが揃っているとのこと。これが死海文書全体の3分の1を占める。残りは自分たちを「ヤハド」と呼ぶ共同体のの教義や預言が3分の1、残りはユダヤ教関連の文書や出所不明の文書である。これらは、ヘブライ語(約80%)、アラム語(約20%)で書かれており、ギリシア語もわずかながらある。

興味深いのは、ほぼ中世の旧約聖書写本と変わらないことであるのだが、創世記については外典で、アブラハムがなぜイサクを生贄にしようとしたかという初出の資料が出ている。これによると、ヨブ記同様、神が悪魔から挑まれ、アブラハムの信仰の強さを試すという展開になっているという記述に驚いた。…つづく。