2025年7月2日水曜日

日本人の宗教観について

https://www.nippon.com/ja/features/h00226/
期末試験後の授業準備のため、日本人の宗教観について改めて調べてみると、様々な統計データがあって困惑する。

文化庁のデータ「宗教年鑑」(2021)によると、神道系48.5%、仏教系46.4%、キリスト教系1.1%、その他4%で、人数で換算すると人口の1.5倍になる。これは宗教法人からのデータであるからで、アンケート調査では、何らかの信仰を持っている人は2~3割という結果が出ることが多いらしい。

現代の日本社会は、どの宗教・宗派を信仰しているかは、さほど重視されず、無信仰を自認する場合も含め信仰を意識することが少ない。NHKの調査(ISSP国際比較調査/宗教2008)では、無宗教49.4%、仏教34%、神道2.7%、その他1.1%、プロテスタント0.7%、カトリック0.2%で、宗教を信仰していると答えた人は38.7%であった。

神の存在については、①神の存在を信じない/8.7%、②神の存在はわからないし方法的に明らかにできない/19.2%、③神がいるとは思わないが超自然的な力はあると思う/23.2%、④神の存在を信じるときもあるし信じない時もある/32%、⑤疑問に感じるが神は存在すると信じている/1.9%、⑦神の存在に疑いを持たない/4.3%となっている。

時と場合によっては人知を超えた宗教的な存在を肯定する意識を持つという③④が半数以上を占めている。また多くのものに神の存在を感じたり、祀ったりする気持ちについて、理解できる/25.9%、どちらかといえば理解できるが52.9%で汎神論的な感覚も多数となっている。前述のように宗教を信じない=無宗教が49.4%であっても、単純に無神論者・不可理論者が半数とはいえないといえる。

ギャラップ社による2017年の調査では、日本は29%が無神論者で中国についで2位になっている。これは、一神教世界の欧米から見た場合であり、ここまで記した「神」が一神教の神というよりも、日本神道的八百万の神や仏教の諸天なども含むものとして見たほうが妥当であると思われる。授業で扱っている世界価値観調査も同様であると思われる。

まあ、基礎的な資料としてはこれくらいかと思う。

2025年7月1日火曜日

大谷選手と間柄的存在

大谷選手の人間性が、アメリカで話題になって久しい。その逸話については挙げればきりがないのだが、その根底に和辻哲郎の「間柄的存在」という日本の倫理観があると私は思っている。アメリカは、極めて個人主義的でプラグマティズムの価値観が強い。その対極的な大谷選手の振る舞いに驚きを隠せないのであろう。

先日、少しエントリーしたが、大谷選手のHRを父親が取りそこね、泣いていた子供に、試合後サインボールやバットを送った話だが、私は直感的に大谷選手の行動を予想できた。野球選手とファンという間柄の中で、そういう行為が理想的だからだ。

常に社会(他者と言い換えても良い)との関係性の中で我々は生きている。大谷選手なら、ドジャーズ、MLB、アメリカ、日本などといった社会との間柄的な関係性の中で生きているわけである。だから、彼がDHという立場で、ベンチに長くいる故に、プレイヤーのための飲料を用意するのも十分理解しうるし、スランプに悩むメンバーに声をかけるのも、足を痛めたフリーマンにスパイクに敷く中敷きをプレゼントするのも、パドレス戦で死球を受けて、仲間に来るなというポーズを取って収めたのも、間柄的存在から見て妥当かつ理想的な行為なのである。

期末考査が終わって、夏季休業までに2コマずつの授業がある。日本の価値観について語るつもりだが、やはりメインは和辻哲郎、そして挫折感を味わった本居宣長かなと思う。