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林大学頭の回答。「たしかに交易は、国に利益をあたえるものでありましょう。しかし、元来我が国は、自国に算出する物のみによって十分に足り、外国から物品を運び入れなくとも、少しも事欠くことはありませぬ。それ故、交易はいたさぬ定めになっており、この国法をただちに廃することは到底できませぬ。使節がわが国に参られたお役目は、人命を重んじ船を安じて航海させることにあり、それらの儀が、ここに解決いたしたものでありまする故、御役目は十二分に果たせられたはずと存ずる。交易の儀は、利益云々のことであり、人命とは縁なきこと。これで御談合はすべて相済み申したのではないか、と存ずる。」
森山は通訳しながらペリーの反応を恐れた。彼は笑ったことなどなく、いつも不機嫌で固い表情をしている。周囲の士官も彼を敬遠している節が見られる。林大学頭の回答の通訳が終わると、そのまま口をつぐみ、何の感情も示さず、思案するように眼を瞬いていた。艦隊を江戸の至近距離まで進め、直接阿部正弘らと談判しようとしているのか。重苦しい沈黙が広がっていた。
ペリーはおもむろに口をひらいた。「貴殿の言われたことには、一理あると認める。たしかに私の使命の主意は、これまで述べた通り人命を尊重し、船舶の航海を安全にすることにある。貿易は、国相互に利益をもたらすが、人命には関係ないことである。貿易問題を要求を強いることは、撤回してもよい。」
日本側に大きな安堵が広がったのは言うまでもないが、随行の士官たちも安堵した。ペリーは、アメリカが中国と貿易を開始するため締結した通商条約の条文(=公文書)をポケットをから逡巡を重ねた後に内ポケットから出した。「必要はなくなったが、持参したので一応見ていただく。」として林に渡した。「一覧することであれば。」と受領した。
その後アメリカ側に応接所の外にいる士官・下士官にも食事を取らせた。有名な蒸気機関車の模型などの贈り物が送られたのは、さらにその後である。
…日米和親条約はこうして結ばれた。林大学頭の通商問題の回答とペリーの「一理ある。」という回答。この辺は、受験の日本史ではあまり深く語られないであろうと思う。それぞれの国家を背負った、見事な論議。あえて当時の言葉をそのまま使うことで再現してみた。海外の読者にはどういう翻訳になるかはわからないが…。



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